幼きバラに

img0406LG

まもなく梅雨。
空気は緑の露を含み、朝夕の煙るような色彩は心を鎮めます。
庭に並べられたバラの苗木は、こうした空気を身の内に入れて、旅立ちの日を待ちます。

薬用バラは限りない伝統の利用法を秘め、香料のバラは閉ざされた心をも開き、温かな香りは心身に強く働きかけます。
野のバラは清々しく、たくましく、頓着のない愛らしさをみせるでしょう。

それぞれに古い系図を持つこのバラたちは、花も実も葉さえも特別なもの。
にぎわう季節の前の静かなひととき。
お客様に抱えられた幼子のバラ、見守る私たちの心も豊かなもので満たされてゆくようです。

萩尾エリ子 / simples