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足もとを濡らしながら、ずっしりと朝露を含んだミナズキの花穂を切りました。
白いホーローの器に入れて、窓際のテーブルに置くことにしました。

蓼科の9月は、不思議な時間を持っています。
夏の名残と秋の予感が、朝夕に入り混じり、身体には、夏の暑い日差しの記憶が残りつつ、机に向かい、本を開くといった知の渇望が姿を見せはじめます。

日の光、月の光にも輝く白い花、日中の窓から吹く風に涼しげに揺れ、閉じた窓とともした灯の中で、ほんのりと淡く浮かびあがります。
自分の歩む道を確認し、また探しはじめるきっかけの9月です。

萩尾エリ子 / simples