春、音をたてて

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それは美しい光だった。
ここで暮らしてから、これほどのものは見たことがない。

雪が雨になり、水滴が木々を伝い、そのまま凍る。
檜葉のきれこみのひとつひとつに、尖った松の葉の先々に、冷たい水晶が光る。

青空が広がり、玻璃はポロポロと形のまま落ちてゆく。
秘やかに無数の音がする。
たった今、春の花たちが届いた。

萩尾エリ子 / simples