聴こえる…

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花の木が赤に燃え、檀香梅が黄に輝く。
風に乗る栗の茶は、樹々から生まれた軽やかな羽根。

見えないほどの細い哀しみの糸が、無数に無数に織りこまれ、
生の喜びの布となる。
静寂の秋は、ずっと前から繰り返し語りかけていただろうに。
この年は、ことのほか聴こえる。胸に浸みる。

光と雨と風を受け、山の金、銀、珊瑚、やがて地を染め、
冬の扉が緩やかに開く。

萩尾エリ子 / simples