庭の千草

【写真】
あたりが秋の気配を濃くする頃、
ボランティアは少なくなった花々を集め、花束をつくる。
それは年に一度、緩和ケア病棟の家族会でテーブルを飾り、手渡すもの。

旅立った人への想いは、いつまでも深く切ない。
それでも懐かしい医師や看護師に会えば、忘れえぬ人が温かく甦り、
涙と笑顔が溢れてゆく。

花束は過ごした庭の香りがする。
抱きしめて、抱きしめて、それぞれの明日をまた、歩きはじめる。

萩尾エリ子 / simples