グリーンノート

【写真】

病院のリンデンバウムの花が咲き、ベンチに座るその人は今日が退院という。
初めて会った私に、彼女の言葉は溢れる。
回復の日々、美しいこの庭に救われたと。
「庭の時間」は優しい。
リンデンバウムの木は、私が16年前に植えたもの。

青年が畑の花々を届けてくれた。
次の日、その花は籠に盛られ、友人のお母様との最期のひとときに寄り添った。

夏の物語は、小さな花のようにいくつも咲いた。

萩尾エリ子 / simples