第1楽章


春の使者が、ふっくらと顔をのぞかせた。
さやさやと揺れる一輪を手折れば、仄かに香る。

この庭には、季節を運ぶ小さな者たちが隠れている。
今、想像の鈴音を奏でて春を祝うのはスノードロップ。
枯れ色の中のひだまりで、その楽団は今日の準備をしている。

萩尾エリ子 / simples