大地に立って

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諏訪中央病院の庭は、その日、光に満ちました。
「ここの花をいっぱいにつけて、いつか踊ってね」。小さな約束は叶い、フラの踊り手は3人の仲間と共にやってきました。
たくさんの人に見守られ、10年かけて育てられた庭が舞台です。

裸足に草の感触が伝わり、風が吹けば、緊張は土と光の中に解けてゆくのでしょう。それは限りなく優しいフラでした。
踊る人が、裏方の人が、見る人が、時おり涙を流し、病と共にある時を、思い悩む時を、それぞれの時を携えて、草の上に集いました。

踊ることの意味を、今ここに居ることの意味を、うっすらとではなく、はっきりとわかる。
「祝福」という言葉を、全ての生命が作りだした時間でした。

萩尾エリ子 / simples