たぐいなき香り

【写真】
母の庭に植えたバラは、どれも香りを抱き咲く。
それぞれの名前は、とうに忘れたけれど、
次々と咲く花は深く記憶に残り、心を満たす。

摘んでは束ね、かごに入れ、想う人に手渡し、また送った。
水に浮かべれば、蓮の風情。
香りたつ一日ごとが愛しい。

萩尾エリ子 / simples