ちょっとそこまで


北風が吹くと、松や樅の小枝を取りにゆく。
林のあちこちから、ひと枝ずつ。
集めた緑は洗面器に入れ、あつあつの湯をそそぐ。

時にはみかんの皮、ローズマリーの枝、タイム、ラベンダーをはらりと。
光を含んだ香気はふわふわと昇り、冬の部屋を満たす。
なぜか、一度も行ったことのないフィンランドのサウナ小屋を想う。

ボール一杯のカフェオレ、レーズンロール。
小さな森を集めて、小さな旅をする。

萩尾エリ子 / simples