胸に手をおき

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ふっくらとした落葉の中から、忘れな草の幼な葉が顔を出す。
重なった葉をそっと除くのは、春一番の庭仕事。
キクザキイチゲもクルマバソウも、光を待ちかねていた。

まだ茶色の庭を、子供たちは無邪気に駆けまわる。
無理もない。小道との境は貝殻や石、木の枝だもの。
でも、こういう庭が好きだから。

どうぞ、生まれたての緑を踏むことのないように。
早春の心配事は、他愛もない。

萩尾エリ子 / simples