風に託して


森の中で開きはじめたウバユリの花が
静かに仄かに香った。
日常の暮らしを突然失い、
猛暑の中に過ごす人たちを想う。

彼の地を訪ねたとき、心をこめてふるさとを案内してくれた
明るく逞しいあの人たちはどうしているだろう。
青いすすきの葉を抜ける、ひんやりとした風を
せめて一枚の写真にのせて送ろうと思う。

萩尾エリ子 / simples