友よ

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匂いスミレが咲きました。
それはとても小さくて、花束にしても片手の中に
すっぽりとおさまるほどです。

あなたには、まだ日常は戻っていないのですね。
一日一日、自分と家族のことで精一杯。
その震えるような痛みは、あなたの中で
必ず美しいスミレの花を咲かせる。
いたわりの言葉など、風に舞う。
ただ抱きしめることができたらと思います。

私は、あなたのかわりにいつものように
春の花を摘み、土を起こします。

萩尾エリ子 / simples