手から手へ


届いたばかりの新しい器に、
柚子の一片と雪の中の香草を入れた。
両手で包み、ゆっくりと味わい、作る人を想う。

彼女は黒い犬と、私は黒い猫と暮らす。
その手はずっと土に触れ、一日一日を慈しむ。
ふわりと湯気が昇り、ひととき春が見えた。

萩尾エリ子 / simples