一日ずつ

春の雪は、咲きかけた蕾たちを全て覆ってしまった。
次の日、雪をとりのぞく。
「私たちは大丈夫よ」と、薄紫の花は言う。

「良かった。強いのね」。
ここの春は、冷たい雪と強い風を運び、
柔らかな光の贈り物も忘れない。
いつものように瞳を輝かせ、今日を大切に。

萩尾エリ子 / simples